suger trap

ある日の放課後。

 

いつも通りHRが終わり、週一回行っている生徒会会議の準備のために、

先に教室を出る藤代灰次(ふじしろはいじ)と高郷惶李(たかさとこうり)、橘悠仁(たちばなゆうじん)に一旦別れを告げ、

職員室に立ち寄った。

そのあとは、そのまま生徒会室へと向かった。

時間で言えば、藤代たちが教室を出てから大体30程度。

少し遅くなってしまったかと、勢いよく生徒会室の扉を開けたところで本日の被害者、天使総志(あまつかそうし)は思考と身体が固まってしまった。

生徒会室には既にメンバーが集まっており、机の上には、各自の専用マグカップに本日の飲み物なのであろう紅茶が淹れられている。

いつもは全員集まるまで自由に部屋の中で過ごしているが今日は珍しくそれぞれの指定席に着いている。

が、それ以上にいつもと違う...いや、明らかにおかしい点があった。

「みんな...なんで泣いてるんでしょうか...?」

何故か、全員がうつむいて静かに涙を流していた。

いつもはうるさいくらいにはしゃいでいる一条古貴(いちじょうこうき)と橘も、眠っているのかと思うほどに静かに...

やはり泣いている。

「あ、あの...灰次先輩はさっきまでいたんですけど、走って出て行きました。」

いつも静かなので気が付かなかったが、困惑しながらも声を発した主である鬼頭龍明(きとうりゅうめい)は皆のように泣いてはいなかった。

ついでに、鬼頭に言われて部屋の中を見渡すと確かに藤代がいない。

「灰次君はどこへ走っていったか分かりますか?」

とりあえず、尋ねてみる。多分、分からないとは思うけれど。

うーん、と少し頭を悩ませてから鬼頭は思い出したように口を開く。

「...持ち主に確認してくる、って言ってました。」

「.....な、何の持ち主でしょうか...?」

 

その頃。

藤代や天使の部屋もある学生寮、紅棟の教員用室で国語科教員の小野はひとり悩んでいた。

「...あれ、ここに置いたよね...?」

先程、部屋を出る前には確かに目の前の机に置いていた、あるものがない。

もしかしたら置いた場所を間違ったのかも、と部屋中を一応探したが見当たらない。

「.....うーん。困ったなぁ...」

無いのは困る、とそれを手にしてから今までを振り返ってみる。

失くしたのは、マグカップほどの大きさの瓶。

よくおしゃれなカフェなんかで見る、いつどこで使うか分からない調味料が入ったアレ。

くらいの大きさの瓶の中身は、実のところ小野もよくは知らない。

 



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